2015年4月

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『江戸っ子』

 

私は「江戸っ子」について詳しく知りません。

 

周りに「自分は江戸っ子だ」と公言している人がいないのもありますし、

そもそも江戸っ子とはどういった環境の下育った人達の事を指すのかもわかっていないからです。

私の浅い江戸っ子情報としては、グーをした手の腹で鼻をピッと擦り上げるとか、

地下足袋を履いているとか、じゃりん子チエに出てきそうとか、

泣ける話にめっぽう弱いとかなのですが、若干間違っているかもしれません。

 

 

先日、家のすぐ近所で、おじさんに道を訊かれました。

 

もう日が落ちていたので、おじさんが私の前で自転車のスピードを落とした際、

私の「変質者ではないかバロメーター」もしくは「物売りではないかバロメーター

(私は訪問販売でうっかり買ってしまうタイプなのです)」が作動し、

前者がまだ作動し終わっていないところで、「ちょっとお尋ねしますがね」と話しかけられました。

 

私はハハーン、この人江戸っ子だな、とピンときました。

 

 

「お尋ねしますがね」の「がね」の部分が微妙に“粋”だったからです。

そして、おじさんは「青梅街道は、ここからして、なにしろどう通ってますかね?」 と言い、

私は「なにしろ」って何だよと思うと同時に、これは江戸っ子ポイント追加だぞ、と思いました。

そして自分も「なにしろ」と言いたいと思ったのです。

 

「えっと、なにしろ直角ですね」

 

 

「なにしろ直角ですか!」

 

 

「はい、この先の細い道が青梅街道と平行なので、ここはなにしろ直角です」 と、

 

江戸っ子っぽい会話をした後、おじさんは

「暗い中お尋ねしてすみませんねぇ、てんで方向音痴で」

と暗闇で恐らく照れ笑いをしていました。

 

またしても江戸っ子ポイント追加です。 「てんで」です。

 

私は九州出身だからか、生まれてこのかた「てんで」を使用した事がなく、

このフレーズもいつか使ってみたい言葉の一つなのです。

おじさんはニコニコして(夜なので推測)行ってしまいましたが、

私にとってなかなかの高得点江戸っ子でした。

 

これからも、居酒屋などで隣のおじさんが江戸っ子ポイントが高かったりする事を

そっと噛み締めたいと思います

 

 (おわり)

 

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出口かずみ web連載エッセイ

今月から毎月一回くらいのペースで、絵本作家の出口かずみさんにお願いしていこうと思ってます。
お互い無理せずやっていこうと思ってますので、長い目で見守って頂けるとありがたいです。
ちなみに、全12回を予定しています。どうぞ、お楽しみに。

 

出口かずみ

佐賀県うまれ。絵本作家、イラストレーター。
マァヘイくんシリーズの絵本など、ユニークな作品が多い。

当店でも「小人とよむしりとりえほん」などの豆本が大人気。


出口さんの豆本など http://rusuban.ocnk.net/product-group/67/0/photo

≫ 出口さんのHP http://www.deguchikazumi.com/